乳歯の芽はつわりの頃につくられはじめます。

乳歯の中でいちばんはやく生える乳中切歯と乳側切歯が妊娠7週ごろ、もっともおそく生える第2乳臼歯でも妊娠10週ころに歯の芽ができます。
だから妊娠がわかったころには、すでに乳歯の芽は作られはじめているので、ふだんから正しい食生活をすることが大切です。乳歯の芽が成長してカルシウムを主とした無機質が増え、歯冠がかたくなるのは妊娠12~23週ころです。
歯が完成するのは生まれてからです。
そして永久歯でも第1大臼歯と前歯は妊娠3ヶ月半から4ヶ月ごろに歯の芽ができます。つわりと赤ちゃんの歯の芽が出来る時期が重なりますが、普通のつわりでは赤ちゃんの歯に影響はありませんので、多少つわりがひどいからといって心配しないでゆったり過ごしましょう。
しかし、食べられない状態が長く続くと弱い歯ができたり、あごの成長が不完全だったりします。
また、妊娠中の病気も赤ちゃんの歯に影響を与えることがあります。

妊娠中はカルシウムをとればよいか

歯はカルシウムだけではできません。
カルシウムのほかに良質のタンパク質、ビタミンA、C、Dをバランスよくとることが大切です。
リンは通常の通常の食事で十分摂取できるので特別にとる必要はありませんが、むしろ、とり過ぎないように気をつけましょう。

インスタント食品や清涼飲料水、スナック菓子に含まれているリン酸塩は一定量を超えるとカルシウムと結合して体外に排出されるのでカルシウム不足をおこします。
砂糖のとり過ぎもカルシウムの吸収を妨げます。
カルシウムとリンの結合には日光浴が必要です。

妊婦のカルシウム所要量 1000~1200mg
(成人の所要量) 600mg

歯を育てる栄養素

形成組織 栄養素 主な含有食品
歯の芽(歯胚) たんぱく質 魚、肉、牛乳(乳製品)、卵、大豆製品
エナメル質や象
牙質の硬組織
カルシウム 小魚、牛乳(乳製品)、海草、大豆製品
エナメル質 ビタミンA 緑黄色野菜、レバー、マーガリン
象牙質の基礎 ビタミンC 野菜類、柑橘類、その他の果物
カルシウムやリ
ンの歯への沈着
ビタミンD 魚、卵黄

歯を育てる食品

歯の健診を受けましょう

妊娠中は少なくとも2回は健診を受けましよう。
ブラッシングがうまくできているか、むし歯や歯肉の状態を診査してもらいます。

妊娠中の治療は、薬の投与やレントゲン検査など、十分な処置ができないこともあります。

妊娠後期になると治療を受けることが困難になることが多く、また出産後もしばらくの間は行けないこともありますので、安定期(妊娠6~7か月頃)の間に簡単な治療は済ませておくことです。
つわりなどのひどい場合は、小さめの歯ブラシでみがきましよう。

食事はバランスよく

お母さん自身の食生活がかたよりのない栄養バランスのとれた食生活であれば、特別にカルシウム剤をとる必要はありません。
とにかく食欲がないときがあっても1日3回きちんと食事をとるように心がけましょう。

妊娠しても歯は弱くならない

妊娠したからといって歯は悪くなりませんが、つわりの時期は歯みがき剤のにおいや味に敏感になったり、歯ブラシをお口に入れただけで吐きそうになることがあります。

歯みがき剤を使う必要はありませんので、歯みがきは行って下さい。
つわりのために歯みがきをしないとムシ歯ができたり歯肉が腫れて出血することがあります。

出血しても軟らかい歯ブラシでていねいにみがいて下さい。
そうすると、やがて出血しなくなります。

また、妊娠するとホルモンのバランスがくずれるため歯肉が弱まり、歯肉炎をおこすことがあります。
ホルモンの分泌異常でおこす歯肉炎はていねいなブラッシングにより十分予防できるし、治すこともできます。